ここ最近、周囲の女性から、「いまどきの男の人は受け身過ぎる」と嘆く声をよく聞きます。「デートの誘いから告白まで、全てこちらでやってあげないとならない」と。確かに、恋愛に積極的でぐいぐいと引っ張るタイプの男性は、現代の日本で(とくに都市部で)減る一方のように見受けられます。もちろん、そういう稀少な男の人との出会いを待ち続けるのもひとつの姿勢ですが、状況を冷静に見極め、「しょうがない、自分から恋愛を動かしてあげましょう」と、覚悟を決め腹をくくった女性が、次々に幸せになっていっているのも事実です。
以前、博報堂生活総合研究所に寄せたコラムを以下に再掲します。ちなみにこのコラムを書いたのは2005年秋のこと。あれから3年。受け身で気の優しい日本の男子たちを巡る構図には、一体どのような変化があったでしょうか?
「決断力のあるバカ」
“物事をパッパッと決断するけれども、それがことごとく間違っている男”、いわば「決断力のあるバカ」と、“物事を慎重に検討してなかなか決めないけれども、最終的には正しい選択をする男”、いわば「賢い優柔不断」。どちらが男性として魅力的か、という質問を身の周りの若い女性にしてみると、驚くほど多くの女性が、「決断力のあるバカ」を支持します。
頭でっかちで、うじうじと考え続ける男にはもううんざり。多少バカでもいいから、素早くバシッと決断して欲しい(正しい方向には、その後、私がちゃんと導いてあげるから)・・・。そんな彼女たちの切なる思いもむなしく、日本にモノを決めない男は増え続け、もはや、「モノを決められる男」なんてものは、イリオモテヤマネコやトキと同じく、絶滅の危機に瀕した稀少種である、というのが、私と友人たちの間では共通認識となっています。
一般に、現代の若い男性(とくに都会に住む高学歴の若者)の特徴として、「周囲に気を配り、人に優しく、場の空気を読み、そつのないふるまいをする。情報感度が高く、情報摂取能力に大変優れ、事前に納得いくまで情報を集めて吟味してから、行動に移る」という点が指摘されます。これは換言すれば「自他共に『正しい』と認めるような選択が可能になる情報が集まるまでは、行動に移らない」ということであり、さらに言えば、「おろかな選択をするぐらいなら、決断なんてものはしない」ということでもあります。なかなかモノを買わない若者、なかなか社会に出ようとしない学生・ニート、そして、なかなかメニューを決めない彼氏・・・。摂取しすぎた情報に翻弄され、与えられるさまざまな選択肢に目移りし、検討に必要なモラトリアムを延長し続け、決断を永遠に先送りする若者たちへの対応に、各関係者は頭を悩ませています。
確かに、おっかなびっくりで歩を進めるほうが事故がなく安全です。慣れないことは、あまりしないほうがいいかもしれません。けれども、「ありあわせの情報と、自身の感覚と、強い信念とで、物事を決断。その後は、自分の選択を最大限よいものにすべく努力する」という、タフで前向きでダイハードな若者の登場(と、それを「浅慮」と批判するのではなく、むしろ助長・促進するような空気づくり)が、いまの日本社会、とくに恋愛市場から、熱望されているように思います。