「悪口」はOKでも「かげ口」はNG

 先日、タレントの有吉弘行がテレビでこんなことを言っていました。
 
 「悪口はいいけど、陰口はよくない」
 
 曰く、目の前の人はどれだけけなしてもOK(冗談めかすこともできるし、それがきっかけで誤解がとけて仲よくなることもある)けれど、その人のいないところで悪口を言ってはいけない(どこでどんな尾ひれがついて本人の耳に入るか分からない)ということ。
 
 これは心理学的にもとても理にかなっている教訓で、いたく感心しました。心理学では「ウィンザー効果」というものがあって、これは「第三者から聞くとその情報の影響力が増す」というものです。
 
 たとえば人から「●●さんがあなたのことを『素晴らしい人材だ』って言ってましたよ」と聞くのは、●●さん本人から言われるよりもうれしいもの。なんといっても真実味が増しますし、照れずに受け入れることもできます。そのため、大会社の役員や経営者など、人望のある人はあえて間接的に人をほめたりするのだとか。
 
 「雑誌やクチコミで、おいしいと聞いた店は行ってみたくなる」「広告で大々的にアピールしている商品よりも、報道で高評価を得ているほうが信頼できる」これらの現象も同様に「ウィンザー効果」で説明できます。
 
 冒頭の有吉弘行のコメントは、まさにこの逆バージョン。軽い気持ちで言ったネガティブなことも、第三者を通じて本人に伝わると「ウィンザー効果」で何倍かに増幅されてしまい、取り返しがつかないことになりかねません。
 
 ツイッターなどのSNSは、下手をするとかっこうの陰口ツールになります。ネガティブなことや個人を中傷するようなことを書かないのは基本マナーです(どれだけ厳しくガードされていても、です)。
 
 どうしても誰かに陰口を言って溜飲を下げたくなったら、本当に信頼できる人、あるいは、まったく縁もゆかりもない人(たとえば仕事の話なら仕事関係ではない人)に言うようにしましょう。

■連載サイト 共同通信ニュース
http://kyodo.newsmart.jp/info/contact/formURLsend.php

!