熱戦が続いたソチ五輪もついに閉幕を迎えようとしています。大会期間中、僕も楽しく観戦しました。
スノーボード・ハーフパイプの平野選手・平岡選手、男子フィギュアの羽生選手、スキージャンプの葛西選手、スノーボード・パラレル大回転の竹内選手、そしてなんといっても、女子フィギュアの浅田選手の活躍が記憶に残っています。
今大会でも、荻原次晴キャスターの号泣や、三浦豪太氏の「知りすぎている」解説などが話題になりましたが、僕も普段からスポーツ中継での解説者の役割については、いつも注目しています。
◆ほとんどすべての解説者が使っている「ですよね」語尾
以前、あるスポーツの中継を見ていて、ある解説者の語尾がとても気になりました。
「このショットはとても難しいショットなんですよね」
「今は、メンタルの強さが要求される場面なんですよね」
「彼は実は、日ごろからとってもよく練習する選手なんですよね」
といった具合に、ほとんどすべてのコメントが「ですよね」で締めくくられるのです。それ以降意識して聞いてみると、ソチ五輪をはじめ、実に多くの中継でこうした語尾が使われていることに気づきます。
この「よね」は、「共感」を示すうえではとても便利な言葉です。
普段の会話でも、「うわー、そんなこと言われたらムッとしちゃうよね」「あ、それっておもしろい視点だよね」と、「よね」を使うことで、場の雰囲気も優しくなります。てっとりばやく共感を伝えられる便利な言い回しなので、スポーツの解説やテレビ中継などでも多く使われるのでしょう。
ですがあまりに頻繁に「ですよね」と言われると、次第に耳につき始め、「あなたも知っている通り」と強要されているというか、反論を許さないニュアンスを感じてしまうこともあります。ときには、「そんなに、ですよね、ですよね言われても、われわれ視聴者は、彼の練習なんて普段から見てるわけじゃないし!」とひねくれてしまいたくなることも(笑)。
◆解説者次第で、試合の面白さは3倍違ってくる
いっぽう、そういった語尾うんぬんは抜きにして、解説者によってその試合の面白さが全然違ってくることは多々あります。そうですね、感覚として3倍は違ってくるでしょうか。同じ試合でも、解説者のコメントが的確で勢いがあり、示唆に富んでいるだけで、その場で実際にプレーしているようなライブ感を味わうことが出来ます。
アメフト・NFLで言うと、河口正史さんと輿亮さんのときは、放送の冒頭で解説者の名前が告げられたときに、テレビの前で「よしっ!」とガッツポーズしてしまう、それぐらい違います。
で、このように、コンテンツを媒介する人、その人の味つけでぜんぜん印象が違ってくるものとして思い浮かぶのが、翻訳者。以前、ある映画を見て興味を持ち原作小説を買ってみたら、あまりに翻訳がひどくて(古くて?)、読めずに捨ててしまった経験があります。
作品をイチから作る人(選手・作者)も大切ですし、作品を届ける仕組み(放送局・出版社・アナウンサー)も大切ですが、解説者・翻訳者・アレンジ・コメントなど、ともすると見逃されがちな役回りの人も、作品の価値に大きく貢献していることを、実感させられます。
◆マイナー競技の「専門用語」も面白い
五輪は、メジャー選手を応援するのはもちろんのこと、普段見ないようなマイナー競技を「へ~」と見るのも楽しいものです。初めて見るスポーツの中継で戸惑うのが、「意味の分からない専門用語」。いったいそれは種目名なのか、技の名前なのか、はたまた特殊なルールなのか。なんとなくわかるけれども、ちゃんとは分からないまま、コトバが耳を通りすぎていきます。
一応、アナウンサーはそのあたりを意識して一般的な言い方に直し、タイミングを見計らって用語解説を加えてくれます。が、その世界で生きてきた解説者は平気で専門用語を繰り出しがち。
たとえば卓球の「つっつき」。以前卓球の放送で、ある解説者が「もうすこしつっつきで粘って、チャンスボールを待つべきですね」とアドバイス。……「つっつき」? 画面には、その声が届いたのか、ラケットを当てるだけのブロックショットで、長いラリーを展開する選手の姿がありました。なのでなんとなく理解できましたが、それにしても「つっつき」とは(笑)。響きの面白さが記憶に残っています。
もちろん、これら玄人言葉にも長所はあります。その「?」という思いから競技自体への関心が強まることもあるでしょうし、試合の臨場感を高め、視聴者をその世界に没入させる演出としても機能しています。実際、「個人的には大好きだけれど、一般的にはそれほどメジャーではない」というぐらいのスポーツの放送で、常識レベルの用語がことさらに解説されたりすると、がくっと醒めてしまうものです。たとえばテニスの試合で、「ナイスプレースメント!・・・(プレースメントというのは)ボールの落下点、です!!」とやられると、個人的にはがっくりきてしまいます(勝手ですね)。
◆「解説者ブーム」とニコニコ動画
最近では、「マツコ&有吉の怒り新党」(テレビ朝日)でも、マラソン・増田明美の解説をたびたびフィーチャーしていますし、サッカー・松木安太郎の「応援」解説も一部ファンから高い人気を誇ります。その他、落合博満、松岡修造、野村克也・・・・・・。その解説だけでお客を呼べる、視聴率を取れる解説者たちは少なくありません。
視聴の選択肢が爆発的に広がった現代において、「解説」は映像コンテンツに付加価値をつけて差別化を図るための、重要ポイント。それは、ニコニコ動画で「映像にツッコミを入れる」ことに慣れ親しみ、ツイッターやフェイスブックで「仲間とワイワイ言いながらテレビを見る」のが習慣になった現代の視聴者とも、極めて相性がいいスパイスです。
取材にもとづくミニ情報を盛り込む解説、居酒屋で野次を飛ばしているような解説、超理論派の解説、勢いがすごい解説・・・・・・。スポーツ中継における「キャラのたった解説」の役割は、ますます大事になっていくでしょう。
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